今回は注意喚起になります
8月も中盤を過ぎると、熱帯性低気圧が台風へと成長し、日本列島に上陸するようになります。そうじゃなくても近年は、ゲリラ豪雨……線状降雨帯が局地的な水害をもたらすことが多くなりました。今年もすでに、各地からの水の被害が報告されています。
お住いの地域が、浸水に見舞われた場合は、自治体の指示に従って避難するしかありませんが、キャンプのようなレジャーであれば、事前の的確な判断によって、痛ましい事故を未然に防ぐこともできます。
キャンプ中の水難事故といえば、長年キャンプをされている方なら「玄倉川の水難事故(1999年)」が想起されると思います。ですがあの衝撃的なニュース中継も、もう20数年も前の話。若い新米のキャンパーさんは知らなくても当然です。
13名の方が濁流に呑まれる瞬間が全国中継されてしまったのですから、川の中州の危険性は、当時全国に周知されました。しかし災害の記憶も次第に薄れるものです。そこで今回は、YouTubeのニュース映像を交えながら、改めての注意喚起を呼びかけたいと思います。
川の氾濫は思いのほか早い
「晴れていても、水害は発生する」。このことをまず第一に肝に命じましょう。現につい先日となる8月6日にも、滋賀県で前日の大雨による鉄砲水が発生し、50人の沢登りツアー、3人のキャンプ客が中州に取り残される事故が発生しました。
キャンプ場は「リバーサイト」とも呼ばれる清流に設置されることが多く、夏は特に人気が高まります。景色も良く、釣りや水遊びも楽しめる最高の環境です。水量の少ない「せせらぎ」なら、何の心配もないように思えます。しかし河川の本質を把握すると、そうとは言えません。
ニュースで空撮されるような水害は、平野の大規模河川の氾濫の映像であることが多く、渓流が氾濫する様子などはなかなかお目にかかれません。そのせいで、目の前を流れる渓流が危険を孕んでいることに、想像が及ばないのかもしれません。
2008年に16人が流され、5名の方が亡くなられた兵庫県の「都賀川水難事故」では、2分で1メートルを超える水位の上昇があったとされています。気付いた時にはもう遅く、大切なキャンプギアも手放して逃げなくてはなりません。それが就寝中だったとしたら、恐ろしい限りです。
小さな川は周囲の山々から水を集めるのが速いのが特徴です。現地は晴れていても、上流で局所的豪雨が発生すれば、小さい分だけに影響を受けやすく、濁流が鉄砲水となって押し寄せます。上流の堰やダムが放水を余儀なくされれば、現地が晴れていても災害は発生します。
現地の、その瞬間の気象状況だけで慢心してしまってはいけません。前日までの降雨量、山の上流部の天気予報など、時間的にも空間的にも、広い視野による危険予測が求められます。楽しみにしていたキャンプでも、取りやめる勇気が必要となります。
川の近くでサイト設営するなら
ここまでのニュース映像でも振り返ってきた通り、一番危険な場所となるのは「川の中州」です。たまたま水上に河原が露出していたとしても、中州は川底と同じだと捉えましょう。何の前兆もなく水没することもあり得ます。
2014年の神奈川県丹沢では、中州から脱しようと試みた自動車が流され、お父さんを除くご家族3人が命を落とす事故も発生しています。「いざとなったら逃げれば良いや」……という軽い考えは通用しません。
その他にも「湾曲したカーブの外側」「水際」などが危険になります。1夜を明かすことになるキャンプサイトですから、就寝中に有事に巻き込まれないよう、テントを貼る位置には特に注意を払いましょう。
皆さんの記憶の新しいところでは、リバーサイドの「長瀞オートキャンプ場」「青野原野呂ロッジキャンプ場」が台風による大打撃を受けていますね(被害者は出ていません)。近年の異常気象は、本当に異常です。
管理されたキャンプ場でも被害があるくらいなのですから、管理者のいないキャンプ場、野営地となればなおさら。注意報発令時の対策や情報が入りませんから、この時期は川の側を避けるようにしてください。
最後に繰り返しますが
その日晴れていたとしても、急激な増水は突如として起こります。台風の翌日や、ゲリラ豪雨の後は特にお気をつけください。「雨が上がったからキャンプに行こうー!」では、早計過ぎます。雨が上がったから、危ないのです。
先月に兵庫県加古川で7人が取り残された事件では、地元警察の方による「朝方は小雨が降っていたけれども、日中は雨が降っておらず、増水する状況にはなかった」……とのコメントが報道がされています。
お盆休みはまだこれからが本番といったところですが、台風の翌日などは特に注意しましょう。今回はリバーサイド、特に中州におけるキャンプの危険性を中心にお伝えしました。川や海で泳いでいる時以外にも、水難事故は起こりうるものと、心の片隅にとどめておいてください。