先日のトークショーから
先月開催された「茅ヶ崎キャンピングカーフェス」において、車中泊専門雑誌『カーネル』の大橋編集長さんと、当「なちゅガール」編集長の森風美とで、ステージトークショーが行われました。
テーマは「防災とキャンピングカー」……東北大震災以来、キャンピングカーの需要が上昇していることはご存知の通りだと思います。また熊本地震の時にはエコノミー症候群で亡くなられた方のニュースが耳目を集めました。
昨今は地震だけではなく、地球温暖化による異常気象による災害も増えました。避難勧告が発令され、避難所生活を余儀なくされる方々も増えました。それに伴い、キャンプグッズや車中泊グッズへの注目も高まっています。
当然、書籍や雑誌、チラシやネット上でも災害時の「持ち物リスト」や「保存食」ついての情報は溢れています。当サイトよりしっかりとした情報源が充実していますから、今さら「なちゅガール」に提案できることは残ってないような気もします。
せめて「なちゅガール」は「なちゅガール」らしく、いつものゆる〜い、一般人目線から、その一助になれればと思います。注意勧告というよりは、普段からの心掛けレベルのアドバイスです。ゆる〜く、軽〜くお読み頂ければ幸いです。
遊びを通して心の準備を!
さて、本サイトが提案したいのは、もう既にキャンプや車中泊を楽しんでられる読者の皆さんに、「その遊びを通してちょ〜っとだけ災害のことも想定してみましょう」というだけのお話です。ちょ〜っとだけで良いのです。
備える「物」はリストアップされ、周知もされていますが、避難時の「心」の方が触れられることはあまりないように感じます。でも72時間分(3日分)の水や食糧の備えが推奨されるように、72時間分の過ごし方にも備えましょう。
「3日間も連泊キャンプできるー!? やったー!!」って考えてしまった方はいませんか? でも、それで良いのだと思います。楽しく、前向きな気分をキープするのも災害時には大切です。ただし、楽しく気ままなソロキャンプではありませんよ〜。
周囲の人やペットのことを考えよう!
いくら自分がキャンプ好きでも、パートナーの方がアウトドア嫌いだったりしませんか? ご高齢の方と一緒にお住いの方もいらっしゃるでしょう。小さなお子さんやペット……防災は、家族全体のことを勘案しなくてはいけません。
食糧と水を家族の人数分用意するのと同様に、避難生活のことも家族全体で想定するなら、いつものキャンプとは勝手も異なります。例えば、大切なペットの扱いに関しては、各自治体でガイドラインが異なったりします。
物の準備より、心の準備。実際にどう行動し、生活していくかの方が大切です。72時間と言いましたが、現在の我が国の救援体制はもっと迅速だということです。南海トラフの反割れでも起こらないかぎり、救援物資や水の到着に3日間もかからないことが多いそうです。
一方で逆に、避難所生活が長くなることの方が懸念されます。物資はすぐに支給されても、仮設住宅などが建ち並ぶまでには時間がかかります。慣れない場所での睡眠や調理、時間の過ごし方までを考慮に入れた時、心の準備はできてますか?
しっかり寝ましょう!
体力と体調を維持し、気力を保つためにも睡眠、快眠は大切です。場所についてはフルフラット(平坦)にしたスペースが「身長+20cm」ほど必要だと言われます。布団や枕だけでなく、マットや寝袋、車内スペースを想定して、睡眠場所を確保しましょう。
見落としがちなのが、プライバシーの問題です。まったく気にならない人もいたりしますが、特に女性は周囲からの視線で眠れなくなったりするものですよね。体育館に避難するにもちょっとしたドームテント、車中泊ならカーテン幕があるだけで違います。
そして実践。ただ、環境や道具を用意するだけでなく、実際に一晩寝てみないと、適正は分かりません。お子さんはどこでも寝れちゃったりしますが、ご高齢の方はアウトドア未経験な方も多いでしょう。
ただし無理強いは禁物ですよ。いきなりキャンプでテント泊ではなく、コテージやグランピングから始めたり……。あるいは自宅のいつものベッドで、寝袋、マットを使用してみたり……。床にコットで寝てみるのも良いですね。徐々に慣らしていくのが得策です。
楽しく生活しよう!
また、避難生活については車内で過ごしたり、テント内で過ごしたりする時間が長くなるとお考えください。限られたスペースと、限られた調理器具とで、そのシミュレーションをしておくと、いざという時に対応できます。
お庭やベランダ、お部屋の中にテントを張ってみたり。駐車場のキャンピングカーや車中泊車の中で過ごしてみたり。楽しく実験してみましょう。普段キャンプやアウトドアに慣れていない人が、その感覚を体験する意義は大いにあります。
その際に、備蓄していた食料を調理して、賞味期限の近いものから入れ替え消費すると一石二鳥。単純に美味しいか美味しくないか、飽きずに食べ続けられるかなど、改善の余地も見えてきます。非常時だからこそ、少ない楽しみの一つが「食」になります。
また、冬の寒さや夏の暑さなど、実際に体験しないと見えてこない課題もあります。暇つぶしのボードゲームにハマったりも良いですが、みんなが不便を感じれば、欲しかったポータブル電源や冬用ストーブの購入を、家族に交渉するチャンスになるかも!
過去の災害から学ぶ
先の熊本地震におけるエコノミー症候群の事故は、一家四人が狭い軽自動車で何日も過ごしたことに起因する痛ましいものでした。あの時は運悪く、震災の後に雨が何日も降り続いたんですよね。
ニュースの映像で、体育館か公民館の外に車が何台も駐車していて、そこで過ごす人々をレポートする様子が今でも頭に残っています。雨が続く中で外に出る頻度が減れば、エコノミー症候群の危険性は高まります。
体育館などに避難できない事情、したくない気持ちがあるのも理解できます。震災後は気持ちが塞ぎ込みますし、車内で24時間寝起きすれば生活も煮詰まります。判断力が落ちてしまう状況が理解できるゆえに、憤懣やる方ない気持ちになるニュースでした。
※)エコノミー症候群(静脈血栓塞栓症)は、飛行機のエコノミークラスのような狭い席に座り続ける事で発症します。血流が滞ることで固まった血栓が、肺や脳などで塞栓を起こす恐ろしい病気です。水分不足と運動不足にご注意ください。
防災は楽しく、前向きに!!
「ゆる〜く」「軽〜く」と言っておきながら、最後はちょっと重く深刻な話になってしまいました。でも非常時だからこそ、メンタルが大切。的確に判断して、前向きに行動するために、気持ちを明るく保つことが大切です。
家が倒壊したり、浸水したり。安否の不明な身内や友人。仕事や商売への不安など。災害発生時に自分がどのようなメンタルになっているかは予測できません。せめて準備や対策の時点から、明るく楽しくつとめようとしてもバチは当たりません。
これを口実に、アウトドア嫌いなパートナーをキャンプ沼に引きずり込んじゃったり……。憧れのキャンピングカー購入を口説き落としちゃったり……。そんなよこしまな気持ちだってぜんぜんOK! これを機に半分遊び、半分まじめ感覚で、楽しく考えてみてください!!