キャンパーとして出来ることを
編集長からの要請もあって、本記事では「災害時に活かせるキャンプ道具の活用法」について考察していきたいと思います。地震だけでなく、昨今は異常気象による水害なども多発していますので、読者の皆さんにもご一考いただけたら幸いです。
娯楽といえども、キャンプの基本はサバイバルです。普段使っているギアが緊急時に役に立つであろうことは想像に難くありません。しかしそこから生じる慢心には注意です。万が一に備えることも大切ですが、いくら備えが万全だからといっても過信は禁物です。
例えば「軽キャンパー入門」でも触れたことですが、自活できる自信があっても、地域から孤立しないようにしてください。’20年に政府が発表したガイドラインでは「在宅や車中泊で避難している人にも名簿登録を進め、物資や情報を提供する」方針が定められています。
緊急避難時は「てんでんこ」と言われても、避難生活では周囲の被災者の方々と協力し、せっかくのキャンプで培った知識やスキルを役立てたいものです。ここからは、避難時のキャンプギアの活用法を「衣・食・住」に分けて考えていきます。
「住」に役立つキャンプギア考
*テント・タープ類
ペグを必要としないドームテントやポップアップテントは、大きな体育館や公民館でプライベート空間を確保するのに有効。着替えや睡眠時にも重宝します。また校庭や広場では大型テントやタープも皆さんの役に立てられます。惜しみなく提供しましょう。
*チェア・テーブル類
硬い板張りの床で長時間過ごすと、腰や関節を痛めかねません。テントも同様ですが、皆さんの迷惑になったり、床を傷つけたりしないように、グランドシートなどを敷いて、管理者の方に断ってから使用しましょう。
*ランタン・ライト類
大小常備しておくと、停電時はもちろん、深夜にトイレに行ったり、暗い中で手元を照らしたりする時にも役立ちます。ガスやケロシンなどの燃焼系のランタンは屋内での使用は避けましょう。燃料の取り扱いにも注意してください。
*その他
災害に備えてポータブル電源や発電機を購入する人もいます。冬季は特に有用ですが、屋外なら焚き火台や薪であっても活躍します。必要としている皆さんとも共有するくらいの広い心が、キャンパーとしては欲しいところですね。
「食」に役立つキャンプギア考
*レトルト・保存食品
キャンプ時は楽をしたい時に頼るレトルト食品や缶詰も、緊急時には命を繋ぐ頼みの綱となります。一般的には3日分が備蓄の目安とされていますが、パントリーなどに乾麺なども買いだめして、古い方から使っていくローテーションを習慣付けると良いでしょう。
*調理器具類
説明するまでもなく、クッカーもカッティングボードもカトラリーも役に立ちます。コンロやバーナーなどでお湯を沸かせると、調理だけでなく救助や保温にも転用できますし、サバイバル時のナイフの利用法は無限大です。
*ジャグ・クーラー類
給水車からジャグやポリタンクなどに水を配給される場面も予想されます。クーラーボックスも(種類によりますが)水を貯められます。ナルゲンなどの小型のボトルやスタンレーなどのポットが効力を発揮する場面も、さまざまに想定できます。
「衣」に役立つキャンプギア考
*ウェア類
アウトドア・ウェアは耐水性、保温性、遮光性などに特化したものがそれぞれあり、シューズから帽子まで、動きやすくタフに縫合されています。シーズンレンジと併せて、タウンウェアと比べれば、大きな強みになるでしょう。
*寝具・シュラフ類
寒い時にはエマージェンシーシート1枚だけでもありがたいものです。シュラフやコット・マットなどがあると、眠りの質も向上します。布団を持ち出すのは大変なので、筆者は常時、車に積んでおくようにしています。
それでも慢心は禁物です
ざっと俯瞰してきた通り、キャンプ用品は避難生活においても心強い味方になります。一方で、その安心感に頼りすぎてしまうと、肝心なことを見落としてしまうこともあり得ます。以下の2点については特にお気をつけください。
1つ目は当たり前のことですが、防災用品はキャンプギアだけではありません。重要書類や衛生用品・医薬品など、通常の防災グッズも網羅しておきましょう。トイレットペーパーなどの消耗品も忘れずに。
2つ目はもっと当たり前のことですが、物を持ち出すことよりご自分の体の避難を優先させましょう。いくら多くの物を備えていても、まずは命を守ることが大切です。必要なものは二次避難として、後から取りに戻れる場合もあります。
……ということで、まだまだ万全ではないとは思いますが、キャンパーとして出来る心構えを考察してみました。楽しい遊びの中で、災害時について想定を巡らすのも有意義なことです。次のキャンプでは焚き火を囲みながら、家族と話してみるのも良いですね。
いざという時の行動を想定し、大切な人と共有しておくのも大切な防災です。