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外あそび
オーストラリア発?
『ブッシュクラフトの語源』

ブッシュクラフトって何?

先日、編集会議が終わって(一応やってるんです、たまに)雑談をしている最中に、編集長の森風美から「えっ? ブッシュクラフトってオーストラリア発祥なのっ!?」という発言があり、「えぇー!? 違かったの?」という展開になりました。

きっかけは「ビリーティー(後述)とかやりたいよね」という何気ない会話でした……

ブッシュクラフト (bushcraft)とは、文明の利器を極力使わずにキャンプ(野営)を行う、一種の野営術、キャンプスタイルのことです。明確に定義はできませんが、なちゅガールメンバーの中では「ヒミカ」さんのスタイルが一番近いかな〜……って感じです。

ナイフひとつで木を削り出したり、現地でテントやチェアをクラフト(工作)したり、ロープワーク(結び方)を自在に操ったり……とにかく格好っっっ良いんですよね! 「第三次」と呼ばれる今回のキャンプブームで、俄然注目を集めるようになったスタイルなのですが……。

ハードルも高いんですよね、難しそうで。私たちには永遠に辿り着けない憧れのスタイルなのかもしれませんが、ロープワークは苦手でもデスクワークは得意な編集部です。僭越ながら調べてみることにしました。今回はそのささやかな成果をお伝えします。

何の役にも立たない記事ですが、ちょっとした謎解きの過程をお楽しみください



ウィキペディアでは

調べるとなったらとりあえずWikiからですよね。早速Google先生に相談して、ウィキペディアの当該ページに行ってみました。すると「ブッシュクラフトの発祥」というそのものズバリな見出しを発見!! そこに書かれていたのは……、

特に北欧がメッカとされており、現代流行し一般認知されているブッシュクラフトの発祥の地とされているが、語源の元をたどれば南アフリカの原住民の生活に端を発する。ただし、ブッシュクラフト同様の行為や技術は、人類が文明を築く上で欠かせないものであり、世界各地でその土地に合った知恵や技術が確立されているものである。

う〜ん……やっぱり「北欧」と書かれていますね。語源は「南アフリカ」……。ページ全体を見渡してみても「オーストラリア」という文字はどこにもありません。やっぱり勘違いだったのか……と、自分の早とちりを恥じました。

元々そう思い込んでいた原因は、英単語「bush」の違いです。ご存知のように英米で「bush」というと「低木、灌(かん)木、やぶ、しげみ」などを意味します。ところがオーストラリア英語ではもっと大きな「森や林」を指すようになるのです。

英米語なら「forest」とか「woods」にあたるものが、オーストラリアでは「bush」なんですね

よって、オーストラリアでよく使われる「bush tucker(野外料理)」「bush walking(トレッキング)」という言葉と同列に、「bushcraft」という単語も存在しているのかと思い込んでいたのです。同じような用法は、お隣のニュージーランドにも多数ありますしね。




Wikipediaでは

と、一旦は結論づけた……というか納得していたつもりだったのですが、「ひょっとして」という思いが沸き起こり、念のため英語版のWikipediaも調べてみることにしました。すると「Etymology(語源)」という項目で、いきなり「オーストラリア」の文字が……!!

《Etymology》
The Oxford English Dictionary definition of bushcraft is "skill in matters pertaining to life in the bush”. The word has been used in its current sense in Australia and South Africa at least as far back as the 1800s.

もう英語は読み飛ばしちゃって、下の日本語訳だけ読んで頂ければ結構です

《語源》
オックスフォード英語辞典による「ブッシュクラフト 」の定義は「森林(bush)の中での生活に関わる技術」である。その単語はオーストラリアと南アフリカにおいて、少なくとも1800年代の昔から、今日のような意味合いで使われているものである。

この先では「bush」について、元々はオランダ語の「bosch」が、植民地で森林を表わすのに使われるようになり、続いて英国の植民地にも転用されたのだろう……と説明されています。両言語とも同じインドヨーロッパ語族のお仲間ですから、逆輸入ってところでしょうね。




2人の立役者

The term bushcraft was popularized in the Southern Hemisphere by Les Hiddins (the Bush Tucker Man) as well as in the Northern Hemisphere by Mors Kochanski…

そのWikipediaのページでは、「ブッシュクラフト」という言葉を普及させた人物として、2人の名前が記されています。南半球で普及させた「ブッシュタッカーマン」ことレス・ヒディンスと、北半球に普及させたモルス・コハンスキです。

2人それぞれのページに飛ぶと、さらに詳細な経歴が書かれています

*レス・ヒディンス(Leslie James Hiddins)1946〜
オーストラリア軍所属中に「軍用サバイバル・マニュアル」を編纂するほどサバイバル術に長けていた彼は、アボリジニ(オーストラリアの先住民)の食生(bush tucker)に触れ、その栄養価の高さを解析するようになります。

やがて、トレードマークの帽子(akubra)と愛車のランドローバー、満面の笑顔とで「ブッシュタッカーマン」として知られるようになり、オーストラリア国営放送とBBCのTVシリーズに出演。書籍の出版や環境保全活動を行なっているそうです。

*モルス・コハンスキ(Mors Kochanski)1940〜2019
ポーランド系移民としてカナダで育ったモルスは、少年時代から古い「ボーイスカウト」の本と「ロープワーク」の本に夢中になったそうで、大学を卒業後は職を転々としながらも、野外生活や先住民の知恵に関わる専門家を目指していたそうです。

28歳の時にアルバータ州の「ブルーレイクセンター」で野外教育プログラムのインストラクターに就任。やがて軍や民間にサバイバル術を指導。大学准教授、雑誌編集などの仕事を経ながら1986年に、ベストセラーになった「Northern Bushcraft(北方のブッシュクラフト)」を出版。


のちにそのタイトルは出版元により「Bushcraft」だけに縮められますが、その言葉はオーストラリアの小説家であり、野営術の本も書いていたRichard Harry Gravesの「The Bushcraft Handbooks(1952)」から付けられたそうです。




結論と考察

2人の経歴を辿った結果、どちらも語源はオーストラリアに行き着きました。今の日本では寒冷地での野営のイメージがある「ブッシュクラフト」ですが、それはモルスが「Northern(北方の)」と断っていた枕詞が取れてしまったせいかもしれません。

信じるか信じないかは、あなた次第です!

まぁ、北欧でも、アラスカでも、アマゾンでも、人類は皆もともと野営暮らしをしていたのだし、その呼び名も各地それぞれあるのでしょう。そのうち、南半球の入植地で生まれた言葉が、たまたま本やメディアで広まり、キャンプスタイルの一つになっただけのこと。肝心なのは中身です。

北欧の「ククサ」や北米の「ダコタファイヤー・ホール」などのように、オーストラリアの野営術の中にも先人の知恵や文化が眠っています。ところがその名前だけが先行してしまっているのは、ちょっともったいないですよね。

akubra(ヒディンスの帽子)をかぶり、matilda(寝袋・毛布)を相棒に、damper(無発酵のパン)を焼いてbilly tea(缶で煮出す紅茶)を淹れるオーストラリアン・スタイルのキャンプも、近いうちに取り上げてみたいと思います。南のキャンプも面白いですよ!

ただウィキペディアを深掘りしていっただけの記事ですが、エラそうなことを言ってみました










Author
なちゅガール編集部
アウトドアの楽しさをお伝えしたくて、日々おもしろいことを探しています。皆様からの情報提供もメールでお待ちしています!! また記事につきましては正確を期しておりますが、最新の情報や価格については都度お調べください。